創作雑記 (3)

今回は、新型コロナウイルス感染の影響下、思わぬ形で再会したテレビドラマについて記してみたいと思います。
三月下旬或いは四月上旬頃からだったか‥緊急事態宣言の中、各放送局が撮影の滞った連続ドラマの枠の差し替えに使った古いタイトルの「編集特別版」なるものが、いくつか放送されていました。
その中の一つに、「野ブタ。をプロデュース」があったのです。
出演は亀梨和也、山下智久、堀北真希。脚本は木皿泉。最初の放送は2005年、日テレ系夜九時からで、今回と同じ枠でした。
思いがけない再会に感慨を覚え、結局最終回まで観させていただきました。

脚本家の木皿泉は、御夫妻の共同ペンネーム。私が最初にその名を認識したのは、2003年やはり同じ枠で放送された「すいか」でした。私は痛く気に入り、私的に丁度辛い時期ではありましたが毎週その時間だけは幸せな気持ちになれたのを覚えています。
ユーモアとウイットに富んだエピソード。どんな奇抜な設定においても、日常から離反せず地に足がついていて、社会の中に潜んでいる毒や不条理から決して目を背けること無くストーリーは綴られていきます。まるで、「生きるってのは‥・こういうことだろ?」と囁かれてるみたいでした。
「野ブタ。をプロデュース」然り、2010年放送の「Q10(キュート)」もまた然りでした。

創作雑記に何故こんなことを書いているかというと、テレビドラマにしろ小説にしろ、偶然の出会いの積み重ねが、いつの間にか創作の糧(かて)やエネルギーになっていると今回感じたからです。

そしてもう一つ。昔のドラマでは無いですが、こちらは新型コロナウイルス関連のNHKの特番「ウイルスVS人類3」を視聴した時の心動かされた出会いです。
番組は百年程前の世界的なパンデミック「スペイン風邪」を扱ったもので、1918年には日本でも45万人の死者が出たそうです。
スペイン風邪で人生観を変えられたという与謝野晶子の一文が、そのエンディングで流れました。
歌人、作家、思想家であり、数々の評論を残した女史の次の文章は、当時と重なる今の世情に対するあまりにも的確な提言に聞こえて、聞き流すことが出来ませんでした。そのまま引用させていただきます。

私は今、この生命の不安な流行病の時節に
何よりも人事を尽して天命を待とうと思います。
「人事を尽す」ことが人生の目的でなければなりません。
私達は飽迄(あくまで)も「生」の旗を押立てながら、
この不自然な死に対して自己を衛ることに
聡明でありたいと思います。