第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その二
ぼくとモリオのいる場所から数メートル離れた、右手の小さな木陰で休んでいる女子三人のグループ。
背が高くて大人っぽい雰囲気のフタハと、活発でおしゃべりなミドリ、そしてもう一人‥‥‥。ぼくが気にかかり、目が離せなくなっていたのは三人目の彼女だった。彼女は、かつてぼくがよく知っていた『女の子』の記憶を、ぼくに思い起こさせていた。
「もしかして‥‥‥ソラ‥なのか?」
知らぬ間に、僕の口からそんな言葉が漏れ出ていた。
「‥‥あの子の名前は ソノ。『ソラ』ではなくて、『ソノ』だよ‥・」
チョコレートで口の中をいっぱいにしながら、もそりとモリオが言った。どうやらぼくの呟(つぶや)いた声が聞こえていたらしい。
「あ‥ああ、そうだった!ソノだ。ソノだったよな」ぼくは慌ててごまかしていた。
ぼんやりと思わず口に出してしまった名前だったが、改めて自分の弱さを認識し、恥じ入った。
「さっきから見てるみたいだけど、転入生が気になるのか?」
モリオに言われてすっかり思い出した。彼女は新学期に入って早々クラスに転入して来た、ツジウラ ソノだった。
「違うんだ。違うよ。ほら‥まだ話したこともないし、見慣れてもいないから‥気になっちゃってさ」
「そうだよなあ。ちょっと変わった子みたいだし、あんまり人と話したがらないらしいし‥‥」
「きっと転入して来たばかりで緊張してるんだよ。それに、ただの人見知りなのかも知れない」
後日加筆します。
ご了承ください。