悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (290)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百七十五

弔(とむら)いだって? つまり‥この『ソラの空白』を弔うということか? 
ぼくはそう思った。思っただけで、口には出していない。もう‥その必要がないと分かっていたからだ。

「 そうだ‥ 」
案の定(あんのじょう)、ヤツからの回答が返って来た。ぼくの思うこと、考えていることは、ヤツに筒抜けの状態なのだ。
儀式でも行うつもりか?という疑問が頭に上(のぼ)った瞬間、ヤツがすぐさま口を開き、『弔い』についての細かな解説を始めた。

「 おまえは今、おまえが拵(こしら)えた世界の中心にいる。この世界は、おまえの心の有り様がそのまま反映されて拵えられているため、おまえは今、言わば『おまえ自身の心の真ん中に立っている』ことになる。分かるな‥‥ 」

にっ 俄(にわ)かに分りはしないが‥ だから今ここにこうして『ソラの空白』が存在し、ぼくはすでにその中に‥いるわけか‥‥

「 おまえが描いたシナリオ通り、この世界であらゆることが進行し、おまえはやっとここまで辿(たど)り着いた。明確な自覚も無しにな‥‥ 自覚が無かったのはおそらく、おまえがずっと抱えてきた、『ソラの空白』への強い執着心のせいであり、それが失われるという筋書きから、ずっと目を背け続けていたかったからだ。 しかし間違いなく、この結末へのシナリオはおまえ自身が、『おまえ自身の精神の崩壊を回避するため』に、描いたものなんだぜ‥ 」

だ‥だから‥ いい加減に諦めて‥ これからの成り行きに大人(おとな)しく従えと‥‥

「 そうだ。 『弔い』の準備は整ったのだ。極めて特別な棺(ひつぎ)が用意され、生き死にの状態に関係なく指定されたすべての参列者も集められた。後(あと)はおまえが腹を決めて、最後まで 大人しく立ち会うだけなんだ‥ 」

「 きっ! 極めて特別な棺?? 生き死にの状態に関係なく集められた参列者だって??? いったい何のことだ!! 」
意味不明のヤツの発言に対して、ぼくの口から思わず驚きの言葉が飛び出していた。

次回へ続く

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