第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百七十八
‥そうか‥‥‥
そうだった‥ のか‥‥‥
だからぼくは‥‥‥
ここにこうしている‥ わけか‥‥‥‥
ぼくに、自覚が芽生(めば)えつつあった。
ヤツが指摘した『後悔』と『復讐心』という二つの感情は、確かにぼくの内面に今もどす黒く渦を巻くものに相違なかった。そしてぼくは、その負荷(ふか)を抱えきれなくなったからこそ‥‥ だからこそここにこうしているのだろうと‥‥・
そうさ‥この『遠足』は、春の朝の病床の窓から、リュックを背負って集合場所に向かう小学生の群れを見かけたソラが、羨(うらや)ましさを滲(にじ)ませて口にしたものだから‥‥、ついつい約束してしまったんだ。ソラが小学校に入学する前でも、ソラが元気になり次第(しだい)‥‥、ソラにまだ同級生のお友だちができていなくても、とうさんとかあさんが小学生に逆戻りしてでもソラのお友だちになって、他にもソラの知っている大人のみんなもたくさんたくさん誘って‥‥、おおぜい一緒で遠足に出かけられるからと‥‥‥‥‥
「 そうさ、つまり『後悔』と『復讐心』という二つの強い感情に支配されて壊れかけていたおまえは、その元々が亡き娘とのただの架空の口約束だった『遠足』に、『妄想という名のはけ口』を見い出したんだ 」
ここで、ぼくの思考をすっかり見透かしていたヤツが、いきなりの口を挟(はさ)んできた。
「 そうしてその『妄想世界』の行先に選んだのが、おまえが少年だった頃まで『ヒトデナシ』の伝承が実(まこと)しやかに語り継がれていて、さらには、かつての賑(にぎ)わいも過去の記憶となって、草に埋もれてただ朽ち果てるのを待っている『巨大迷路廃墟』が現存しているかも知れない‥この‥‥『ハルサキ山』と言うわけだ‥‥ 」
次回へ続く