目を凝らさなければ‥見えないものがある。

突然ですが、「現代百鬼夜行絵図 ろくろ首」の1ページ目です。
女子高生の主人公をまじまじと見つめる親友のアップでこのお話は幕を開けます。
親友は、主人公の最近の様子に何か隠し事の臭いがあるのを敏感に嗅ぎつけて、この後それを問い質(ただ)そうとします。

「世の中には、目を凝らす人間にしか見えないものがある」
例によってこの言葉がストーリーの鍵となるわけで、親友が感じていた通り、主人公は最近家庭内に重い問題を抱えていました。
彼女(主人公)は、とある団地で両親と小学校低学年の弟との4人暮らし。ところが母親が書置きを残して突然失踪、彼女は途方に暮れると同時に、買い物などを含めた家事を一手に引き受ける羽目になったのです。
下校途中親友と別れてから彼女は、この日も買い出しの大きな袋を下げて団地に帰っていきます。

団地の敷地内を歩く彼女。敷地内には散歩する老人や、時間潰しに会話を楽しむ主婦たちの姿が見受けられます。
母親が出て行った事実は、家族以外の誰にもまだ言えないでいます。しかし、最近になって毎日大きな買い出しの袋を下げて帰ってくる彼女の姿は、団地内の人々の下世話な好奇の視線に否が応でも晒(さら)される事となるわけです。
我慢して通り過ぎるしかないわけですが、彼女は部屋に戻ってからもそう言った「視線」をなぜか時々感じる様になります。
幼い弟にしても夜、窓の外に誰かがいて部屋の中の様子を覗(うかが)っていたと騒ぎ出す始末。

真夜中の事。突然弟が熱を出し、彼女は最寄りのコンビニエンスストアで間に合わせのアイスやドリンクなどを買うために、急いで部屋を出ます。

そして、真夜中の団地の、こんな場面に出くわしてしまうわけです。

それはたぶん‥‥・、団地で眠る幾多の人々の解放された「剝き出しの好奇心」が具現化された光景‥‥‥‥‥だったのかも知れません。

と言うわけで、しばらく絵を描いていなかったので描きたくなりました。ただ、絵を描いていくにはやはり何かしらのテーマみたいなものがあった方が良いと考え、この「ろくろ首」のコンセプトを思い出したわけです。これから何週か、「目を凝らして何かを見ている人物」の姿や「目を凝らしていたら見えて来たもの」或いは「見えてしまった何か」を幾つか描いてみたいと思います。

ちなみに、これから描くそれらの絵は、「悪夢十夜」の次回の話「遠足 ヒトデナシのいる風景」に繋がる「予感めいたもの」にもしたいと考えています。
宜しかったらお付き合い下さい。