悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (302)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百八十七

「 道理(どうり)で『おまえのヒトデナシ』は‥ よく働くわけだ‥‥ 」

そんなヤツの皮肉交(ま)じりの言葉に、先ほど見せられた『巨大迷路廃墟の外壁(そとかべ)にずらりと連なっていた、腹を裂かれて逆さまに吊るされた数々の死体』の映像が、ぼくの脳裏に甦(よみがえ)った。
嫌な予感がした。
一体どこまでが『ヤツのヒトデナシ』の仕業(しわざ)で、どこからが『ぼくのヒトデナシ』の仕業なのか、今すぐはっきりとさせたかった。
「 おっ おまえの言う‥ 『ぼくのヒトデナシ』が よく働く とはつまり‥‥‥ 」 ぼくは矢も楯(たて)もたまらず、その答えを求めてヤツを促(うなが)していた。
「 外壁に吊るされた百二十一人の犠牲者のうち‥‥、『ぼくのヒトデナシ』が手を下したのはそのうちの 何人なんだ? 」きっぱりとそう口にして、ヤツを見つめた。

そんなぼくの前のめりの態度に、ヤツも真面目な顔になって、真っ直ぐこちらを見つめ返してきた‥‥‥‥‥‥

「 ふん! さっき説明したばかりだろうが‥ 」 ヤツの声が不満げに、ぼくの耳に響いた。 「 外壁に吊るされた者達の中で『オレのヒトデナシ』が排除したのは、教頭先生、送迎バスの運転手、パトロールにやって来た警察官二名で、いずれもこの遠足の継続を危(あや)うくする存在だった。その四人、それだけだ 」

「 そっ、それだけだって?!! 」 ぼくは驚愕(きょうがく)した。

「 ああ、つまり‥ 百二十一人から四を引いた百十七が、『おまえのヒトデナシ』が手を下した人数だ 」
ヤツは、何の特別な思い入れも示さずに、ただ淡々と、そう答えた。

次回へ続く

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