悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (285)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百七十

「 ああ、最後までだ。もうすぐ全ての準備が整うはずさ 」
葉子先生の顔をしたヤツが、ニタリと笑った。

ぼくは、心に渦巻く不安を整理できないまま聞いている。もはやぼくに選択肢(せんたくし)は無く、全ての準備が整いしだい『何か』が始まり、そしてその『何か』は、ヤツの導きで『最後まで』行われるのだ。

「 いったい、何が始まる? 何の準備が整うんだ? 」 堪(たま)らずぼくは質問した。

「 ほう‥ 」 ヤツのニタリが、呆(あき)れ顔に変わった。 「 オレはおまえが、ずっと嘯(うそぶ)いているんだとばかり思っていたが‥‥ おまえは本当に、自覚できていないらしい 」

「 そう‥かも知れない‥‥ 」 ぼくは、力なく相槌(あいづち)を打った。この世界で体験して来た事象の大体のものには、確かに自分の意思が反映されている痕跡を感じる。しかし、それらの事象を積み重ねていって、ぼく自身が最終的に何を目指してどうなりたいのかが分からない。つまり、『自らが描いたはずのシナリオ』の『至るべき結末』が、いつまでも霞(かすみ)がかかったように見通せず、まったくもって自覚できないのだ。

「 もしかしたらおまえは‥‥ 無意識の内に自分に制限をかけて、わざとそうしてるのかも‥知れないなあ 」
「 えっ!? 」
ヤツがぼそりと漏らした指摘は、ぼくを驚かせた。

「 なっ! なぜそんなことを言う?! 」

「 もしかしたらおまえが‥‥ これから最後に起こることを本当は‥望んでいないからかも知れないなあ 」 ヤツが答えた。

次回へ続く