友人を偲んで

次の企画を始める前に、書いておかなければと思いました。

早いものでもう半年が経ちましたが、四月下旬からの長い連休が始まろうかという日、元担当編集者から知らせがあり、私の数少ない漫画家の友人であった荻野真さんが亡くなられたことを知りました。
循環器系の疾患で入退院を繰り返しながらも長い間仕事を続けて来られた彼でしたが、私事に紛れお見舞いに伺うこともしないままのお別れとなってしまいました。

通夜の席、棺に眠る荻野さんと久しぶりの対面を果たした時、不覚にも涙があふれ、またひとつ大きなものを失ったことを実感しました。

一応のヤングジャンプ本誌掲載はしたものの、まだ海の物とも山の物とも知れぬ新人のひとりだった私のもとへ、青年漫画大賞を受賞して急きょ集中連載が決まった作家さんがいるから助っ人としてアシスタントに入ってくれないかとの依頼があり、「缶づめ」になるべく駆けつけたホテルにいらしたのが荻野さんでした。
執筆中だったのが、彼の代表作となる「孔雀王」。以来、荻野さんとは長いお付き合いとなります。
思い出されるのは、とんとん拍子で「孔雀王」の正式連載が決まり、新しい仕事場を構えるべく世田谷駒沢の古アパートからの引っ越しを手伝った時のことです。
重い荷物を運び出し、「疲れた、疲れた‥」と外階段に座り込んだ荻野さんでしたが、その表情は未来の希望に満ちあふれたものでした。
以来彼は、私の遥か前方を走り続けます。

喪主である奥様に伺ったところ、近々まで続いていた連載を入院中のベッドの上で執筆し終わらせ、さらには次回作の構想にも取り組んでいらしたとのことです。
漫画家として走り続けて来た荻野さんは、最後まで立派な漫画家でした。

再度この場を借りて、ご冥福をお祈りいたします。