第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百八十二
ヤツはぼくに対して、非難の圧力を感じさせる言葉を並べ立てた後、その葉子先生姿の顔に、侮蔑(ぶべつ)の表情を張りつけて見せた。
「 ‥‥何回も同じことを言うが、ぼくにはやっぱり自覚が無いんだ。 ‥だが、いかにも子供が好むファンタジー世界で展開しそうな‥筋書きでは‥ある 」 ぼくは、そう答えるしかなかった。
「 ふん! だったらこいつを見せてやろう! 」 ヤツはそう言いながら真顔に戻り、両目線をしっかりとぼくの方へ向けた。 「 今更おまえを外まで連れ出すのも面倒だからな‥、映像だけでもおまえの頭の中へと送ってやる 」
「 えっ??! 」
そして次の瞬間、ぼくの眼前に『巨大迷路廃墟外壁』の異様な光景が広がっていた。ヤツがたった今送って寄越した映像なのだ。
迷路の外周を囲(かこ)う高さ2メートル余りある外壁(そとかべ)の連なりと、無造作に絡みついたツタに邪魔されながらもそこにほぼ等間隔に並んでいる、例の『腹を裂かれて内臓をはみ出させ、逆さまに吊るされた死体』が見えた。
「 こっ こいつは!! 」
ぼくが固唾(かたず)を呑(の)んで見守る中、映像は、どんどんとそのフレームを移動させて行き、およそ縦25メートル、横35メートルはある巨大迷路敷地全体の外壁一周全部を映し出して行った。そして、驚くことにそれらのどの外壁も、同じ処置が施(ほどこ)されているとりどりの死体で、すっかり埋め尽くされていたのだ‥‥‥‥‥‥
「 ‥‥これは‥ 今現在の‥ 本当の‥様子なのか? 」
あまりのショックに、言葉を失ってしまったぼくだったが、しばらく経ってから何とかヤツに質問を浴びせた。
「 ああ‥ 」 ヤツは即座に答えた。
「 一体‥‥ 何人が吊るされてる? 」
「 今現在は、百二十一人だよ‥ 」 ヤツは、いとも容易(たやす)く、言ってのけた。
「 ‥これをやってのけたのは‥‥ 『おまえのヒトデナシ』なのか? それとも‥『ぼくのヒトデナシ』の仕業(しわざ)なのか?‥‥ 」
「 ククッ いい質問だ 」 ヤツは笑った。
次回へ続く