新春漫画放談

年が明けて先日の事、H.Iさんより丁寧かつ熱い応援のメッセージを頂きました。ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
その中で、現在の活動、そしてこれからの活動についてのご質問がありましたので、答えになるかどうかは分かりませんが少し書いてみます。

私の作家としての情報が乏しいのは、長く漫画の仕事から離れていたためですし、今も生活の糧は漫画以外から得ています。
漫画から離れたのは決して創作活動が嫌になったわけではありませんでした。少ないながらも時間の許す限りいくつか仕事もしました。しかし、漫画の世界での自分の立ち位置が最後までつかめなかったのは事実で、間違いなくずっと「絵を描くことが好き。お話を作ることが好き」ではありましたが、その二つの「好き」を同時に漫画に昇華していく難しさを、痛いほど経験しました。そもそも、何で つけぺん で描かないといけないのか、何でスクリーントーンを切って貼って削る手間をかけるのか、何ですべてをはっきりとした黒い線と黒い点(スクリーントーンは点の集合体です)で表現しないといけないのか‥‥。もちろんそれは印刷するためだとは分かっているのですが、それによって生み出された漫画執筆独特の技術や方法は素晴らしくもあり、重い枷(かせ)でもありました。作画する作業のきもは、頭に浮かんでいる絵やイメージを、どこまで紙の上に再現できるかだと思っています。執筆はいつも時間の制限があり、絵は急げば急ぐほど形式化し、記号化していきます。そのお約束みたいなものが、漫画の味であり個性であるのも理解していますし、私自身もそんな漫画を小さい頃から楽しんできました。でも結局私はそんな世界に適合できなかったのかも知れません。今みたいなデジタル技術があの頃すでにあれば随分違っていたのかと、最近つくづく思います(もっともそのデジタルが今、漫画を含む紙媒体の息の根を止めようとしているのですが‥‥‥)。
ブログを立ち上げたのは、今までの自分の仕事を整理しておきたかったのと、やり残していた事を何らかの形にしたいと考えた、言わば私の終活です。自由に時間を取れるわけではありませんが、勿論新作の漫画も描いて行けたらと考えています。どうぞ暖かくお見守り下さい。

これはおまけですが、書いてて思い出した事を最後に。
昭和の人間が薦める漫画。発売日に雑誌を買い求め、単行本を全巻揃えました。わくわくしながら紙のページを繰り、ひたすら純粋に楽しみ、感動しました。読者としての私の「漫画ベスト5」です。

「あしたのジョー」「おれは鉄兵」「荒野の少年イサム」「男組」「漂流教室」

私も随分歳を取りました‥‥