悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (86)

第二夜〇仮面 編集後記

「仮面」と言うタイトルは、単行本「リアリティー」に収録されている短編の中にも存在します。
あえて同じ題名を使用したのは、今回はまさしく「物質としての仮面」そのものがストーリーのカギを握るからです。

ペルソナ(仮面)はユングの心理学における概念の一つですが、具体的に着ける仮面ではなく、周りに対して装う人格だったりします。その象徴的な意味合いをある程度具象化して、着けていた仮面が外れて落ちたらどうなるだろうかと思って書いてみました。
実は今回の「仮面」には原案となるものがあって、やはり単行本「リアリティー」に収録されているオムニバス短編「土色画劇」の中の一編、「自分嫌い」がそれでした。「自分嫌い」も言わば悪夢の話で、自分自身でありながら「仮面的な人格」の日常の言動がどうにも我慢できない女の子の葛藤を描いています。数ページのごく短いものですが、私自身結構気に入っていて、いつかもっと掘り下げて長くしてみたいと考えていました。いざ取り掛かってみて、あれこれいじって膨らませていたら、まったく別の話になってしまいました。
主人公の「私」には酷な展開でしたが、これもまたアイデンティティーの定まらぬ中、日々山積みになった理不尽な課題を目の前にして右往左往し生きている若者だからこそ、見てしまった「悪夢」でありました。

作中登場する架空のアニメ「天と地と僕と」ですが、ストーリーのクライマックスと結末をある程度書いておいた方が良かったのでしょうが、上手く盛り込めませんでした。少し残念です。
ご感想などお聞かせ願えれば幸いです。

次回からの第三夜ですが、「遠足」か「流星群の夜」を予定しています。直前でまた別のものに変更する場合もありますので、その時はご容赦ください。