ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (62)

最終話「夕暮れ」 その十九 「缶蹴り」中編
小学校の西側は山が迫っていて、日が山に隠れようとしている。
山が落とす影は、低い場所から少しずつ学校を飲み込んでいく。まずは運動場、そして中庭と校舎・・・。校舎の二階建ての部分を照らす光が、最後の挨拶をするように一瞬眩しく輝いた後、日はすっかり姿を消して夜の到来を告げた感じはするが、見上げると空はまだ変わらぬ明るさを維持していて、もうしばらくは遊びに興じられた。

夕暮れは始まっていたが・・・缶蹴りは続いていた。

「・・鼻くそ丸めて萬金丹・・・・どや!」
「こっちは・・石より硬い黒仁丹やぞ‼」
「アホかおまえら!汚いわ!」
服装のとりかえを元に戻したD雄君とC太それにE君が、中庭に面した平屋建ての校舎の裏側、奥まったところにある木の陰に隠れている。さすがにここまでは鬼もやって来ない距離感なので、座り込んで壁にもたれ、ふざけあっていた。

ガサリ・・
「えっ⁈」
と突然、何か重い物が乗っかった感触で目の前の木が揺れた。
見上げる三人。

F郎とGちゃんが、枝を伝って降りてきた。
「何や、お前らか・・」
「姿が見えんと思たら、屋根の上におったんか?」
F郎とGちゃんは、足をかけるのに丁度いい枝ぶりの木を利用して校舎の屋根に登り、身を伏せて奇襲の機会をうかがっていたのだ。
「出番が無さそうなんで降りてきた・・・」

するとそこへ、どこに隠れていたのかB介君とH君が、タイミングを図ったようにコソコソと姿を見せた。
「おいおい、全員勢ぞろいしてしもた。散らばらな面白ないやろ。」
「Gちゃんがもう晩ごはんやって・・・・俺も一緒に帰るわ・・」

そろそろお開きにする頃合いか・・みんながそう思った。
「よし!そやったら最後にみんなでいっせいに飛び出して、鬼をびっくりさせるか!」
「それより、Aに内緒で、このままみんなで帰らんか?」
一同顔を見合わせ、ニタリと笑った。
「明日学校で、Aがいつまでおったんか聞くのもおもしろいな!」

そんなとんでもない展開など露知らず、鬼のA君は相変わらず油断なく周囲を見回していた。
「・・・・もうそろそろ・・終わらんかなあ・・・・・・」

次回、後編へ続く

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