ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (54)

最終話「夕暮れ」 その十一
「推理小説」や「名探偵」に興味を持ち始めたのは、小学校高学年の頃だったと思います。
最初は、なぞなぞの延長上の謎解きクイズでした。「名探偵入門」「あなたも名探偵」的な子供向けの本。古典的推理小説で使われたトリックを引用した短い読み物や、作品に登場してきた名探偵が紹介されていて、鳥打帽にマント、パイプに虫眼鏡という「シャーロックホームズ」定番のビジュアルは、この手の本で知りました。
推理小説の醍醐味のひとつである高度なロジックを味わうのはまだ先の話でしたが、提示された不可解な謎が解き明かされる時の快感は、何とも言えないものがありました。子供とはいえ、生活の中幾多の「答えの見つからない謎」に行きあたっていた私には、ある種カタルシス的な意味を持っていたのかもしれません。

私には三学年年上の兄がいて、私が小学校高学年の時にはすでに彼は中学に上がっていました。
そしてこの兄が、この時期、極めて重要な出会いを私にもたらしてくれます。

兄が中学校の図書室で借りてきた本、入れ代わり立ち代わり読んでいた二十冊からなる全集本がありました。
あかね書房刊の「少年少女世界推理文学全集」がそれです。
ポーの「モルグ街の怪事件」に始まり、ドイルの「シャーロックホームズの冒険」、クリスティーの「ABC怪事件」、クイーンの「エジプト十字架の秘密」、ミルン、ルルー、チェスタートン、カー、クロフツ、バンダインと著名作家名作が勢ぞろいです。他にもチャンドラーやハメットのハードボイルド、ハインラインやアシモフなどのSFまで網羅されていました。
さらに特筆すべきは、子供にとってあまりにも魅力的な本の装丁と、想像力を掻き立てる様々な作風の挿し絵が存分に織り込まれていた事です。

兄の机の上に置いてあったハードカバーの本。装丁に誘われるように手に取った私。
この瞬間、私は確かに「ひとつの深遠なる世界」への入り口の扉を叩いたのです。

次回へ続く

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