「木霊」のストーリーです。放課後の木造校舎で男女五人の生徒が超能力の検証実験を始めます。その最中、嵐の中謎の存在が校舎内に侵入し、彼らを含め学校に残っていた教師らが一人、また一人とその餌食となっていくのです。
解説ですが、開始4ページ目で校舎全体の地図を提示する事で、読者にこれから舞台となる空間全体の把握をしていただきます。
地図は最も完成された情報ツールの一つです。RPGなどのマップで、これから始まる冒険に胸を躍らせる方もいらっしゃるでしょう。地図は容易に読者をその世界に引き込んでくれます。
後に「地図シリーズ」という地図が主役的な存在となるいくつかのストーリーを思い立ち、その一作目「彼女の地図」という中編を増刊号に掲載しましたが、その時も地図を効果的に使う事ができました。
話は戻ります。主人公「和美」は能力(遠感)の持ち主です。彼女は、離れた場所に居ても他の人物の存在を感じ取ることができ、その居場所を特定できます。彼女の頭の中のイメージを、地図の部分部分の光の点として表示してみました。
その光の点、実は映画「エイリアン」(1979年リドリー・スコット監督作品)の1シーンの投影です。映画中盤チェストバスターがケインの胸から飛び出し巨大な宇宙貨物船ノストロモ号の船内に姿を消し、やがて巨大に成長したエイリアン(成体・通称ビッグチャップ)がダクト(通風口)内に侵入したとの情報がもたらされます。船長ダラスは火炎放射器を手にダクト内の捜索に向かい、ランバートが見守る動体探知機のモニター画面の表示する信号(光の点)が、ダラスに接近するエイリアンを知らせるのです。
画面上、点滅し移動する光の点がダラスの危機を予感させ緊張感を高めていきます。
つまりモニター画面の信号を、和美の地図上の光の点のイメージに置き換えたわけです。木造校舎全体が言わばノストロモ号船内といったところでしょうか。
これらのアイデアが、たった20ページの短編をテンポがあり娯楽性のあるサスペンスホラーにしてくれたと思います。
ちなみに校舎に侵入した謎の存在の正体は最後まで明かされず(実は決めてなかった)、タイトルも完成後にいくつかの候補から編集さんのアイデアで「木霊」に決まった次第です。
最後に電子書籍化された際、印刷が薄くなり、「地図上の光の点」が不鮮明になっていたのが残念です。これからご覧になる方は、その点を留意してお読みくださるよう願います。
次回は「木霊」のテレビ(実写)ドラマ化の事を書いてみようと思います。
そうですね。確かに小説、漫画などで地図や舞台となる建物内の図があるとその場の空間や方向が何となく把握できて作品に入りやすくなりますね。それとプラスして私は建物の外観、その場所を少し上から見た景色など冒頭のシーンにあると嬉しいですね。この「木霊」という作品はそれも満たしているし正にホラー短編ものとして読んで嬉しい作品です。
追伸
先日、古本屋で泉鏡花の「草迷宮」(文庫)を購入し数十ページ読みましたが7月頃図書館で借りた本よりは読みやすい感じですがやはり難解です。それよりも表紙にあるあらすじの(亡き母の手鞠唄、母への憧憬を胸に唄を探し求めて彷徨する青年)というストーリーが気に入って読み始めたのにいつになったらこの青年の話が出てくるんじゃーと少し切れ気味の今日でした。
これと比較すると今、並行して読んでいる日影丈吉選集(図書館)や過去に読んだ夢野久作作品の読みやすいこと。感謝です。
それではまた。
コメントありがとうございます。
泉鏡花は文体もそうですが作品もなかなかの曲者ぞろいかもしれません。