アメリカからやって来た冒険と大冒険 後編

私が小学生だった頃の忘れがたきアメリカ産アニメ、次に紹介するのは
「マグーの大冒険」です。

原題が「The Famous Adventures of Mr.Magoo」
どうやら以前から「Mr.マグー」という、頭の禿げあがった道化が似合いそうな三枚目のキャラクターがいて、その派生のひとつがこの作品の様です。
「マグーの大冒険」は、Mr.マグーが様々な物語の中のいちキャラクターに扮し活躍するというもので、たとえば「ドン・キホーテ」では従者サンチョ・パンサを、「白雪姫」では七人の小人(全員)を大真面目でやります。
以下、その他のエピソードのラインナップです。
「宝島」
「白鯨」
「ウイリアムテル」
「ロビンフッド」
「巌窟王」
「三銃士」
「アーサー王」
「リップ・ヴァン・ウィンクル」
「ポール・リビア」
「ガンガディン」
「真夏の夜の夢」
「ノアの箱舟」
「フランケンシュタイン」
「シャーロックホームズ」
「ディックトレーシー」
エピソードによっては一回で終わらず、何回にも亘るものもありました。

毎週軽快な音楽にのせて始まり、小学校の図書室に並んでいる様な欧米の有名な物語がアニメになって登場するわけですから、興味津々です。今にして思えばその後外国の文学に接していく時の道しるべとなっていた気もします。

特別印象に残っているエピソードをいくつか‥
アメリカ版の浦島太郎「リップ・ヴァン・ウィンクル」はこの時初めて知りました。
ウィンクルが森の奥深くに迷い込み、見知らぬ老人に誘われ酒盛りを始めますが、近くの広場で数人がボーリングの様な玉転がしの遊びに興じている風景は何とも奇妙でした。
「ポール・リビア」は、アメリカの歴史を詳しく学ばない限りなかなか知りえないお話で、ポール・ルビア自身は愛国者として知られていてアメリカ独立戦争中イギリス軍の監視をしていた人物。「レキシントン・コンコードの戦い」で、イギリス軍が陸路で来るか海路で来るかを知らせる合図に、鐘楼の様な塔にカンテラだったかランタンだったかを吊るすシーンが印象に残っています。
そして私が最も秀逸だと思ったエピソードは「白鯨」です。おそらくマグーが扮していたのは、モビーディックとの壮絶な闘いで船は沈みたった一人生き残るイシュメイルだと思われます。終始物語を漂う陰うつなムードが良く表現されていて、片足を失い復讐に燃えるエイハヴ船長、自らが入る棺桶を携えている船員の一人であるインディアンの不吉な占いとその言葉が結末の悲劇を予感させます。ラストシーン、大海原にポツンとたった一つ浮かんだ棺桶と流れる語りが、何とも言い難い余韻を残しました。
後にも先にも私にとって「白鯨」は、このアニメがすべてだったかもしれません‥‥

次回は、「マグーの大冒険」に関連して映画の話をしてみたいと思います。

アメリカからやって来た冒険と大冒険 前編

テレビアニメが黎明期を過ぎ、小学生だった私の日常に欠かせない存在になっていた頃の話です。
アニメは国産のものだけではなく、外国特にアメリカで制作された作品がたくさんブラウン管に登場していました(古い表現でわかるかな?)。「ポパイ」や「トムとジェリー」、「チキチキマシン猛レース」などはご存知の方も多いでしょう。日本語への吹き替えは当たり前ですが、日本オリジナルの主題歌がしっかり作られているものもあり、かなりの存在感があった事は確かです。
数知れない輸入作品群の中、記憶に残るいくつかのシーンが今も脳のあちこちを刺激し続けている‥‥そんな二つのアメリカ産アニメをこれから紹介してみたいと思います。

最初のひとつは「JQの冒険」です。
科学者を父に持つジョニー・クエスト少年が、父や仲間とともに世界を旅し様々な冒険をすると言うお話です。
SFあり怪奇趣味ありの色々な要素が詰め込まれていて、今にして思えばまるで当時のアメリカ娯楽映画のカタログのような作品でした。

無表情にただゆっくりと一歩一歩しかし着実に歩を進めてどこまでも追ってくるエジプトのミイラ男は、忘れられないエピソードです。
さらに、エネルギーを吸収し大きくなっていく透明な謎のモンスター。JQ達はペンキで色を付けようとします。このモンスター、映画「禁断の惑星」の「イドの怪物」を連想させました。
宇宙から飛来した謎の黒い球体。突然表面に大きな一つ目が現れ、上部から数本の長い足が伸びてきてクモのように歩き出します。「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する使徒のひとつの雰囲気です。
他に、確か映画「ドクターモローの島」みたいなエピソードもありました。

アメリカ産のアニメは、「トムとジェリー」に代表されるような短い尺のドタバタギャグが多かった気がしますが、そんな中で「JQの冒険」はクールな感じで好きでした。

次回後編へ続く