悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (141)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 番外編 キャラクターブック(2)

今回は、遠足に参加している生徒以外のキャラクターと、作中に綴られている諸々(もろもろ)の名称 事象について解説していきます。

〇登場人物

葉子先生  遠足を引率するクラスの担任である女性教師。絶えず子供達の動向に目を配っていて、誰かがケガをした時などは手際よく処置できる。実直で模範的な先生である。

風太郎先生  遠足を引率するクラスの副担任である男性教師。若く、教師になったばかりで、風貌(ふうぼう)だけではなく時にその言動も、まだまだ大学生の域を出ていないのかも知れない。虫に詳しく昆虫採集を趣味にしていることと、声を掛けられる気安さのせいもあって、男子生徒には絶大な人気がある。

教頭先生  遠足を引率するベテランの男性教師。話好きであり、地域の歴史にも詳しい。管理職ゆえの常識的な判断を絶えず求められていて、何かのアクシデントが起こって遠足を続行するか否かが問われた時など、彼が責任を負って決定を下す立場にある。

水崎先生  自家用車で現地に先乗りして同行する予定だった女性の養護教諭。子供の扱いが上手く、生徒達から人気がある。モリオも彼女のファンの一人であるらしい。
一行が現地に到着した当初から行方知れずで、引率してきた教師たちを戸惑わせる。彼女の車は現地の駐車場に残されていて、後に着メロの音をきっかけとして駐車場近辺の茂みの中から、彼女の携帯電話も発見される。

ソラ  たびたびヒカリの語りの中に登場してくる謎の人物。これまでの情報では少女(もしくは幼女)であり、『葬儀の回想』があったことから、すでに亡くなっているらしい。ヒカリ本人との関係は今のところまだ不明である。因みに、大人になった高木セナがその葬儀に参列している描写があった。

ヒトデナシ  ?

〇作中登場の名称・事象

ハルサキ山  遠足の目的地。かつてのフィールドアスレチック施設の一部を整備し直した『芝生広場』があり、広場を含めた付近一帯をそう呼称しているが、『山』と呼ぶほどの標高はないらしい。クラスに配られたメールやプリントによると、トイレや水道が備えられていて『安心して自然とふれあえるところ』との説明書きがあった様だ。

巨大迷路  すでに閉鎖されたフィールドアスレチック施設の目玉だった人気建造物。まだ未確認ではあるが、施設全体が閉鎖された後も取り壊されずに、廃墟となって残っている可能性がある。ヒカリが林の中から目撃した『赤い花』が咲いていた場所である『こんもりした緑の小山』が、もしかしたらそれなのかも知れない。
モリオの父は子供の頃、営業当時のこの迷路を体験していて、タイムアタックで不名誉な記録を残している。ヒカリも、迷路の全体像やディテールをなぜか具体的にイメージできて、その佇(たたず)まいをまるで『木の砦(とりで)』であると称している。

朧月夜(おぼろづきよ)  作中、途中休憩で立ち寄った菜の花畑で、合唱部の生徒達に歌われた唱歌。モリオが、『菜の花畑のうた』と勘違いしていた。

野ばら  作中、水崎先生の携帯電話の着メロとして奏でられ、それに合わせてツジウラ ソノが歌唱した印象的な歌曲。ゲーテの詩に名立たる作曲家が曲をつけたもので、日本では近藤朔風の『野中のばら』の訳詞で歌われるシューベルトとヴェルナー作曲の二作品が良く知られている。
因みにツジウラ ソノが歌ったのは『シューベルト作曲の 2/4拍子の軽快な印象のヴァージョン』の方である。

擬態  生き物が、自衛や捕食などの様々な目的の為に、体の色や形を他の生き物の姿や様子に似せること。作中では『人の手に見える虫』について生徒から質問を受けた風太郎先生が、疑問符付きではあるが取りあえず『擬態』として説明している。

次回から、『遠足』再開です。

悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (140)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 番外編 キャラクターブック(1)

突然ですが、これからいよいよ佳境を迎える『遠足 ヒトデナシのいる風景』をより分かりやすくお読みいただくために 一度整理して置くという意味を込めまして、作中の登場人物などの解説をしてみたいと思います。

〇登場人物(ほぼ作中登場順です)

ぼく(ヒカリ)  お話の語り手であり、この『夢』の主(あるじ)である。夢の中では小学二年生として遠足に参加しているが、意識は大人のそれで、すでに結婚もしているらしい。年齢は不詳(ふしょう)。

モリオ  当初からヒカリと行動を共にしている友人。親友と呼ぶほどの親密感はない様だが、いわゆる『馬が合う』タイプのクラスメートらしく、ヒカリとのさり気ないやり取りが二人の良好な関係を物語っている。チョコレートが好物で、遠足にも五種類を持参し、事あるごとに一種類ずつ平らげていく。

フタハ  背が高く、大人っぽい雰囲気の女子。二年生になった春から、合唱部に所属している。

ミドリ  活発でおしゃべりな女子。やはり春から、合唱部に入っている。

ツジウラ ソノ  新学期に入って早々、クラスに転入して来た女子。フタハやミドリに誘われて、合唱部に入る。その容姿は、ヒカリが『ソラ』と呼ぶ少女に似ているらしく、彼女を見かけたヒカリを動揺させる。度々(たびたび)披露される歌唱力でもヒカリを魅了した。
水崎先生の携帯電話捜索には進んで参加し、的確な助言でヒカリとモリオをサポートしている。

タスク  昆虫採集が好きな小柄な男子。遠足にも、虫取り網を持参している。彼の虫取り網は、水崎先生の携帯電話捜索の際のヒカリ達の目印として利用された。

タキアラタたち  ヒカリが『一番エネルギッシュな奴ら』と称するクラスの男子のグループ。休憩場所の菜の花畑では鬼ごっこを始め、葉子先生に、花を損ねないようにと注意される。
芝生広場到着後は、芝生の上に前屈みの車座になってトレーディングカードゲームに興じる姿を、ヒカリに目撃されている。
ちなみに、菜の花畑の鬼ごっこの最中『朧月夜』を歌い出したタキも合唱部に所属している。

高木セナ  独特な言動の女の子で、周りの人間には年齢よりも幼いイメージを持たれている。そのイメージに母性をくすぐられるのか、一人では何もできないと勝手に誤解したクラスの一部の女子達は、必要以上に彼女の世話を焼きたがっている。途中の林の中の道で腕から血を流し、その傷を負わせたのが『人の手に見える虫』だったと言い出した。
ヒカリとは一年生の時から同じクラスで、彼女が持つ『特別な能力』を知ったヒカリは、その時から彼女に興味を抱き続けていた。大人になってから二人は久しぶりに出会い、ヒカリはそれを『人生にとって意味のある再会』だったと語っている。

草口ミワ  いつも高木セナの傍にいて、彼女の世話を焼いている女子の代表。高木セナが無口で引っ込み思案だと、端(はな)から思い込んでいる節(ふし)がある。

次回の、キャラクターブック(2)に続く