ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (60)

最終話「夕暮れ」 その十七
宮川一朗太扮する高校受験生沼田茂之が、ただ黙々と鉛筆を動かし続けています。
ノートに書かれているのは「夕暮れ」、その文字の羅列。
夕暮れ、夕暮れ、夕暮れ、夕暮れ、夕暮れ、夕暮れ・・・・・・・・
鉛筆の芯と紙の摩擦音。ページが「夕暮れ」で埋め尽くされていきます。
そこに、茂之の頭の中のイメージでしょうか、いくつかのショットが挟まります。通学に使っている土手でしょうか、ススキが夕日を受けて揺れています。仕事を終えた路線バスが、バックして駐車場か車庫に収まろうとしています。他愛のない夕暮れ時の風景。

狭い部屋、勉強机に向かう茂之は、すぐ隣に座っている松田優作扮する家庭教師の吉本に、ノートを見せてこう言います。
「夕暮れを完全に把握しました・・」

森田芳光監督作品、映画「家族ゲーム」のワンシーンです。
どういうわけか私は、幾多の場面の中で、このシーンをよく思い出します。そして思うのです。
何かに夢中になっていると「夕暮れ」は、把握する準備もしないまま、いつの間にかやって来てしまうものだと・・・・・

小学六年生の冬に入って、「少年期の夕暮れ」が訪れようとしていたのは確かです。
塾に通いだし、部屋で何かをする時間が増え、外で遊ぶことが少なくなっていました。
何よりこの時期、世の中や人に対して複雑な感情を抱くようになっていて、自分自身の存在に対しても「しっくりこない」というか、何かあやういものを感じていました。まわりのあらゆるものに、自分にさえ「安心」出来ない、「安心」を手に入れられない状態が続いていたのです。
まるで、いきなり周りの景色の明度が落ち、遠くまで見渡せなくなった感覚。確かめるためには目を細めなければなりません。

すっかり遊びに夢中になっていて、ひとつの・・「夕暮れ」が来ていました・・・・

次回、最終話「夕暮れ」、完結です。

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