クライヴ・バーカー原作の仕事 (2)

1980年代の書店の文庫の棚はホラー小説の魅力的なタイトルで賑わっていました。スティーヴン・キングをはじめとしてクーンツ、マキャモン・・・・
短編集では、サンケイ文庫からキングの「骸骨乗組員」や「深夜勤務」などが出版されており私も愛読していたのですが、今回集英社文庫からクライヴ・バーカーの短編集・血の本シリーズが刊行される事となったのも当時のモダンホラー小説の攻勢を感じます。
1986年末最初の一冊「ミッドナイト・ミートトレイン」が発売され、以降年をまたいで二ヶ月に一冊のペースで 「ジャクリーン・エス」「セルロイドの息子」「ゴースト・モーテル」「マドンナ」「ラスト・ショウ」 全部で血の本6タイトルがそろいます。

私がクライヴ・バーカー原作の「丘に町が」に続いて漫画化したのは、やはり「ミッドナイト・ミートトレイン」の中から「下級悪魔とジャック」でした。
これは私が選択したのではなく、編集サイドからの要望だったと記憶しています。漫画化に際して、映像的には見せ場の少ない地味なものに感じましたが、ストーリーがよくできていました。


内容は、魔王庁の命令を受けた下級悪魔が、ジャックという男の魂獲り(悪魔のあらゆる能力を駆使して生贄を苦しめ破滅させる。死に追い込んで魂をとる悪魔の仕事。)
しかし魂獲りにはたった一つだけ禁じられている事があって、生贄に直接手をかけてはいけない、あくまで自身に死を選択させるという掟。それに背くと使いの悪魔は自滅してしまう。
ここに、とてつもなく鈍感そうな男ジャックと下級悪魔の対決が幕を開けます・・・

掲載はヤングジャンプグレート青春号Vol.9号で、読者の皆さんからは好評を得た作品だったようです。

次回は映画「ヘル・レイザー」の原作となった「魔道士」の漫画化の話です。

 

クライヴ・バーカー原作の仕事(1)

私がブログを始めた理由は、もちろん皆さんに様々知っていただく事と同時に、齢を重ね漫画から離れていた時期も長く、過去にしてきた自分の仕事をそろそろ整理し振り返っておく必要を感じたからです。

原作がある作品は「リアイティー回想記」で紹介済みの「夢十夜」や「高野聖」などがありますが、中でも原作が新しく著作権上今後も全編をお目にかけることが難しいであろうクライヴ・バーカーの作品を今回は紹介してみようと思います。

クライヴ・バーカーはイギリスの小説家で当時、世界幻想文学大賞と英国幻想文学大賞を受賞した若手モダンホラーの騎手として注目を集めていました。
1986年後半、集英社文庫からホラー短編集「血の本」シリーズが随時出版されることとなり、私のところに宣伝を兼ねてその中から数作品を漫画化するお話が舞い込みました。
担当編集者さんから手渡されたシリーズ最初の一冊目は「ミッドナイト・ミートトレイン」。この中から一作を選択する権利を与えられ、私が選んだのは「丘に町が」でした。

内容はユーゴスラビア南東部を旅する若者二人が出会う驚愕の祭りを描いたもので、町の名を持つ巨人が登場し悲劇が生まれます。私がこの作品を選んだのはヴィジュアルとして十分にアピールできると考えたのと、今まででにない発想がそこにあったからです。
掲載された雑誌はヤングジャンプ ザ・グレート青春号で31ページの読み切りでした。今回アップした2Pは最初と最後のページです。
原作は絶版状態ですが入手可能だと思います。具体的なストーリーについては作家の端くれとして詳しく書けないので、興味のある方は探して見てください。

 

次回は同じくクライヴ・バーカー原作「下級悪魔とジャック」について書いてみたいと思います。