1980年代前半、読み切り短編「歪みの構図」でデビューした当時新人の私は、その使命として(大げさか・・・)本を読み映画を観て(特に邦画をよく観ましたが)新しい漫画表現を模索していました。
そんな時出会ったのが森田芳光監督の映画「家族ゲーム」(ATG配給)です。
映画館に足を運んだ私は冒頭からスクリーンにくぎ付けになりました。
その独特で才能あふれる演出は私を虜にしただけではなく、表現の可能性の扉をいくつも指し示してくれました。のちにビデオで発売された同タイトル(当時ビデオソフトは高価で14,800円?もした)を買い求め、擦り切れるほど繰り返し観たのを覚えています。
触発されて書き上げたのが、のちのシリーズ連載タイトルにもなった「REALITY]です。教室で起こる群像劇、ほとんどが会話だけで進行するという自分としては実験的な作品で、ジグソーパズルを組み合わせていくように構成していきました。
完成したネームはすぐに週刊ヤングジャンプ本誌(1984年39号)に掲載が決まりました。
ストーリーで、作中劇のラストと本当のラストシーンで現れる紙袋を被った女子学生。実は映画「家族ゲーム」のワンシーンから頂きました。
教室で先生が生徒たちにテストの答案を返却するシーンで、数秒ほど登場します。興味のある方は探してみてください。
蛇足ですが「REALITY]が週刊ヤングジャンプに掲載されてしばらくして、学生さん(高校生だったかな?)から文化祭関係で映像化する旨、許可を求める問い合わせが編集部に数件あったそうです。新人の身にはとても嬉しく、もちろん快諾しましたが、はたして映像化は実現したのでしょうか・・・
もう亡くなられてから何年も時が経ちましたが、この場を借りて森田芳光監督のご冥福をお祈りいたします。
次回は「土色画劇」について書きます。