リアリティー回想記 「仮面」

単行本リアリティーの表紙として使われたのが「仮面」のトビラです。表紙の案を試行錯誤している段階で、担当編集者さんの機転により使用が決まりました。
好き嫌いのある表紙だとは思いましたが、目を引く事は間違いないという判断で自分も快諾しました。

内容は密室物の群集劇です。夜の都会の真ん中、終電間近の地下鉄の同じ車両にたまたま乗り合わせた様々な人物達が、謎の男とかかわる事で話がとんでもない方向に展開していく一幕物の舞台といった様相でしょうか。「REALITY」と同様、新人作家として新しい表現を模索した実験的な作品となりました。
1987年ヤングジャンプ増刊3/10号に掲載され、印象的だったようで少なからず反響もいただきました。
シリーズ連載「リアリティー’88」への道しるべ的な作品だったのかもしれません。

当時、営団地下鉄東西線(現在は東京メトロ?)の始発駅「中野」に写ルンです(当時スタンダードだった使い捨てアナログカメラ)を持参し、駅や車両を撮影したのを思い出します。

最後に一言、邦画のファンとして、作中に登場する謎の男が戯言のように口にする名は実在した映画監督の方からお名前(一文字変えてあります)をいただきました。興味のある方は調べてみてください。

次回からは電子書籍化されたもう一冊、「巨人真伝トキ」プラス「木霊」について書いていこうと思います。ご期待ください。

リアリティー回想記 「土色画劇」

「土色画劇」は様々な題材を扱ったオムニバス短編ですが、掲載当初ヤングジャンプの他の作家さんに「案がもったいない」と忠告をいただきました。
確かに一つ一つを膨らませればもっと面白いお話になったもったいない案の使い方をしていたかもしれませんが、当時新人作家としては自己アピールをすることで精一杯だったんだと思います。
以下、各話簡単にコメントしていきます。

第一話「墓標」
最初のお話なので少々表現が派手めな話をもってきました。きのこ雲の描写を独特なものにしようと試みました。

第二話「背中」
作中にあるとおり、飛び降りた人物の意識は落下する瞬間まであるのではないかと思って描いてみました。

第三話「声」
内容より電話機の古さにビックリです。

第四話「自分嫌い」
心理的な夢の話です。自分ではお気に入りの作品です。夢の中で自分が死ぬイメージは人生の転機やステップアップの意味があると言われています。

第五話「夜歩く」
同名タイトルはジョン・ディクスン・カー(カー作品の原題はIt Walks by Night)や横溝正史の作品があります。いつか使ってみたい魅力的なタイトルだったので、そこから発想して描き上げました。ちょうどハレー彗星出現の年だったんですね。

以上は1986年ヤングジャンプ増刊号に掲載されました。
次回はいよいよリアリティー回想記の最終回、「仮面」です。