目を凝らさなければ見えないものがある (1)

例えばあなたの視界が‥‥‥、自然の草木とか様々な人工物が拵(こしら)えた「枠(わく)」や「遮蔽物(しゃへいぶつ)」に邪魔されて限定的になり、その狭かったりする枠の中や遮(さえぎ)る物と物との隙間(すきま)に焦点を合わせていると、通常だったら気づかなかったであろう「何か」が見えてしまったりした事はありませんか?


彼女は、放課後の視聴覚教室で一人、先生から頼まれた作業をしていました。
大型ディスプレイなどのAV機器を始め、アナログプレーヤーや真空管アンプまでが並ぶ大きな棚の裏手に回り、互いの機器を接続し合っているたくさんのケーブルやコードに一本一本目を這(は)わせての、あくびの出そうな確認作業でした。

「‥ん?」

「誰?」
今、棚の表側の教室内‥‥、並んだ機材と棚枠、上下左右に繋がれた接続コードが勝手に作り出した大小様々な形の隙間(すきま)のその向こう側を‥‥‥、誰かが横切って行った気がしたのです。
「先生?‥‥」彼女は表側に出て行きました。
しかし誰もいません。

彼女は薄暗い教室の中央にふらふらと歩いて行って、そうしてしばらく立っていました。
‥‥‥小さな‥女の子‥‥‥‥だったかも知れない‥‥
彼女はそう思いました。

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