ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (52)

別冊付録 当時少年だった私がまったく使うことがなかった「用語集」②
前回の続きです。早速いきます。
[ナンセンス] 無意味なこと、ばかげていることをさす言葉ですが、例えば学生運動をしている彼らが、大学当局と交渉する場を持ったとして、質問に対するその回答が余りにもありきたりで、旧態依然としていた時など、学生達は一斉に「ナンセーンス!」と声を上げます。

[シンパ] 共鳴者、同情者の意味をもつ英語「シンパサイザー」の略。政治的な運動をする組織や団体の思想を、外部から支持、賛同する人達をさす言葉。
「彼は、○○のシンパだから・・」というように使います。

[ブラフ] はったり、威嚇、虚勢、こけおどしなどの意。
トランプのポーカーで、手札をいかにも強そうに見せる「はったり」のように、政治的かけ引きの中でも用いられ、「ブラフをかける」というように使います。
蛇足ですが、意味の中の「こけおどし」、漢字で書くと「虚仮威し」。この字の響きが、個人的に好みです。

[ノンポリ] 英語「ノンポリティカル」の略。政治や学生運動に関心が無いこと、または関心が無い人。
「ノンポリ学生」、「彼はノンポリだから・・」などというのはどちらかと言えば、政治や運動に関心を示さない者への軽蔑の意味が込められていた気がします。

ここからは「用語」ではなく、当時の世相が窺えるものをいくつか並べてみます。

[キャラメルママ] 大学紛争の最中に大学周辺で、活動に参加している学生らにキャラメルを配って、学業に専念するよう訴えていたおかあさん方がいらしたそうです。今聞くと、ちょっとおしゃれなイメージのする言葉ですが、当時は「キャラメル」の甘さが、親の過保護ぶりを象徴しているというような解釈で、批判的な意味合いで使われていたようです。

[とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへいく] 作家橋本治氏が東京大学在学中、駒場祭のポスター(任侠映画風なイラスト)に書いたコピー。当時は東大紛争の真っ最中。

[週刊少年マガジン] 活動家の学生さんたちも読者だったと言われる漫画雑誌。
当時、「巨人の星」「あしたのジョー」の二本が連載中で、他にエログロ、問題作などをどんどん掲載していたという記憶があります。少年だった私の認識では、もはやあれは「少年誌」ではなかったと思います。

[いちご白書] 1968年にアメリカ、コロンビア大学で実際に起きた紛争を題材にした70年公開の青春映画。主題歌は「サークル・ゲーム」。
1975年の日本でヒットした、バンバンの「いちご白書をもう一度」はこの映画を歌ったもので、過ぎ去った時代への感傷と、さらには学生運動の挫折感までもが伝わってくる気がする名曲だと思います。

ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (51)

別冊付録 当時少年だった私がまったく使うことがなかった「用語集」①
「安保は、麻疹(はしか)のようなものだった・・・・」
何の一節だったか、確か大江健三郎氏の小説だったか・・はっきり思い出せませんが、安保闘争(たぶん60年安保)の時、国中が高熱に浮かされた様な状態で、やがて熱が冷めていった後、あれは一体何だったのかとみんな遠い目をしている・・・・みたいなイメージで受けとめました。
当時の状況がなかなかつかめなかった私でしたが、この比喩でなぜか腑に落ちた気がしたのを覚えています。
70年安保は、私自身すでに小学校高学年だったので、断片的ないくつかのニュース映像が記憶にあり、ベトナム戦争に対する反戦運動、成田空港建設問題などの報道はよく覚えていて、中でも、複数の大学で起こっていた「大学紛争」はすごく印象的でした。そのせいか、70年安保はその大部分が大学生らによる「学生運動」だったと言う認識は今もあります。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題。「安保闘争の時代に飛び交っていたであろう、しかし普通の日常生活の中ではたぶんあまり使われなかったであろう用語」をいくつか集めてみましたので、ご紹介したいと思います。

[ゲバルト] もとはドイツ語のようです。暴力に訴える、いわゆる実力行使の意味だと思います。「ゲバ」と略して、機動隊を殴る角材を「ゲバ棒」、全共闘内の党派同士の内輪揉め的争いを「内ゲバ」、などと言うように使います。
「やめてケレ!やめてケーレ!ゲバゲバ!」は「老人と子供のポルカ」。

[スローガン] 活動の目的を、明確かつ簡潔に表した言葉。現代風に言えば「キャッチコピー」でしょうか。

[シュプレヒコール] デモ行進や集会で、参加者がスローガンなどを一斉に唱える事。やはりドイツ語らしいです。
中島みゆきの「世情」の歌詞に登場します。「シュプレヒコールの波、通り過ぎていく・・」。

[アジテーション] 「攪拌(かくはん)」の意味。政治活動では、言葉や文章で人々を扇動する事。「アジ」と略して「アジ演説」。大学の校門付近によく立てられていた、「安保粉砕」などのスローガンが書き込まれたでかい看板(通称 立て看)、独特の字体が使われていて、「アジ文字」と呼ばれていたようです。

次回へ続く