ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (37)

第五話「月の石」 その九
1970年9月、半年間続いた「日本万国博覧会」は閉幕しました。

自らの少年時代を振り返るに、来るべき未来に希望を抱いて夢を追いかけていた子供だったかというとまったくそうではなく、時の流れに身をまかせて生きるのが精一杯のちっぽけで卑屈な少年でした。
様々なものに過剰に反応し、いたる所に「闇」を見いだしては怯えている。社会の欺瞞にうすうす気付いていて、大人の顔色を窺いながら日々暮らしている。
世界ではいつもどこかで戦争をしていて、世の中には地球を何回も消し去る事のできる程の核爆弾が存在している。分かり合えない人々や国。ボタンひとつで忽然と消え失せてしまうかもしれない未来‥‥‥
子供らしくテレビアニメや特撮映画に胸を躍らせ、作り上げたプラモデルを掌にのせあらゆる角度から眺めて空想に浸る事はありましたが、本当に一番欲していたのは「安心」してうたた寝ができる平和だったのかもしれません。

小学六年生の私に時代が運んでくれた「日本万国博覧会」という体験。
それはつかの間ですが、未来を夢見る方法をあらためて教えてくれ科学技術進歩の足音を確かに聞かせてくれました。
夢の大パノラマは、今も私の胸の中にしっかりとした温度をもって存在しています。

最後に今一度、「月の石」とは何だったのか?
政治的な思惑にまみれ、途方もないお金を費やして成し遂げられた有人月面探査であったかもしれませんが、その成果のひとつ「月の石」がたくさんの観客を集めたのは紛れもない事実です。人々はおそらく「月の石」の存在を共有したいと願い、つまりは「夢を見たい」と願ったのだと思います。人類はまだまだやれるんだと。近い将来、月へ旅行できる日が必ずやって来るに違いないと‥‥。

「ぼくらのウルトラ冒険少年画報 (37)」への2件のフィードバック

  1. 日本万国博覧会の話、少年(先生)の視点から見た当時の世相をうかがい知ることができて参考になりました。現在は当時のような世界大戦、最終戦争への畏れはなくなりましたが国と国、社会や所属する地域、組織、個々の生活の上での不安は決してなくならないのが現状でしょうか?
    2025年に再び大阪で万博開催予定ですが6年先の少年少女たちに心湧き踊る様な未来世界を感じさせてあげたい次第ですね。

    話変わりまして最近の読書。
    「黒面の狐」三津田信三・・・炭鉱を舞台としたホラーミステリー。お勧め。とても面白かったです。「言鯨16号」九岡望・・・海が砂漠で言鯨という生物の遺骸周辺に街がある不思議な世界の物語。
    「虚無への供物」中井英夫・・ご存知。本日午前中「黒面~」読了した後読みましたが20数ページで挫折。麻雀のシーンが異様につまらない。興味ないし。
    「呪いの塔」横溝正史・・大先生の初期作?本日「虚無への~」後に読む。面白くないわけではないが50数ページで止める。
    「密室キングダム」柄刀一・・千八百枚の巨編。「呪いの~」後に読む。面白そうだが50ページくらいで止める。今日はミステリーばっかり何か飽きてきました。
    明日から土曜まで宿直、日勤、明けなど含めて6連勤です。やれやれです。
     
    それではまた来週を楽しみにしております。

    1. コメントありがとうございます。
      大阪万博のような時代のイベントは、めぐり逢いと一緒に体験するその世代の共有感がある種の大事な宝物となります。
      この先同じ時代を生きて同じイベントを体験できるという事は運命かもしれません。長生きしましょう。

      読書とは当たりの少ないくじを引くようなものかもしれません。
      同じ作家でも傑作、秀作、駄作ありで、感じ方は自分自身のその時の周辺環境にも影響を受けます。
      しかし当たりくじを引いた時の喜びはひとしおですし、つまらない作品も何かの役に立っているものです。
      面白いものに巡り合えなかったり読み続けられない場合、私は無性に詩集を読みたいと思ったりします。

      お仕事忙しそうですね。お身体に気を付けて頑張ってください。

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