帰ってきたぼくらのウルトラ冒険少年画報 (5)

空想特撮映画「シン・ウルトラマン」初夏の公開が近づいてきました。
今回はそれを期待しつつ、最初の「ウルトラマン」を取り上げてみたいと思います。

科学特捜隊のハヤタ隊員がベーターカプセルを手に、今まさにウルトラマンに変身しようとしています。
因みにこの科特隊の制服ですが、「機動警察パトレイバー」の特車二課の制服が明らかにこれを意識したものに見えます。そう言えばOVAのエピソードの一つに、「ウルトラマン」の最終回のパロディーらしきものがあって、ゼットンを彷彿とさせる怪獣「グリフォン」が科特隊だかウルトラ警備隊だかの混在したイメージの基地を急襲し、それを迎え撃ったのがイングラムならぬ「イングラマン」でした。

眩いフラッシュビームを放ち登場したのは銀色の巨人、我らがウルトラマンです。
特殊な擬音が流れる中、片手を突き上げて伸びあがる様に出現するイメージのカットはみなさんもご存知でしょうが、その映像のウルトラマンの胸にはカラータイマーがありません。これは、当初のデザインコンセプトにはカラータイマーは存在していなかったそうで、映画「シン・ウルトラマン」のウルトラマンの胸にもカラータイマーは見当たりません。さらに後頭部から背中、腰へと続くヒレ状の突起(おそらくスーツ脱着時のファスナーを隠す為のもの)もすっきりと消えています。

これは「Aタイプ」と言われる初期のスーツ。だいたいは一番変化がうかがえる「マスク」部分の区別の為に、「Aタイプ」「Bタイプ」「Cタイプ」などと呼ばれています。

こちらは、素材の進化等でデコボコが無くなり、美しいマスクとなった「Bタイプ」のウルトラマン。当初「口を動かす」事を想定して作られていた「Aタイプ」の特徴の口のスリットが消えています。きりりとした口元の、凛々しい、私が一番好きなウルトラマンです。細かいところですが、つま先が反る様に少し尖っているのも特徴の一つです。

ラストは。横に広がって幽かな笑みをたたえた感じのする口元の「Cタイプ」です。ウルトラマンと言えばこれ、と多くの人が認めるのがこのマスクのはずです。美しい、言わば完成形です。

特別参加の雄姿は、「帰ってきたウルトラマン」です。最初の「ウルトラマン」終了から四年後にテレビに帰って来たウルトラマンですが、このマスクは前述の「Cタイプ」のマスクを型取りして作られたものだと聞いています。

続いては、ウルトラマンが戦う怪獣についてです。
写真は透明怪獣「ネロンガ」の前に立ちはだかる我らがウルトラマン。この「ネロンガ」とウラン怪獣「ガボラ」が、まだ詳細は不明ですが、まったく新たな姿となって(短い映像ながら見る事ができた姿は、「エヴァンゲリオン」の使徒っぽいとの声が上がっています。私は「ウルトラマンエース」に出てきた超獣「バキシム」なんかを連想してしまいました)、映画「シン・ウルトラマン」に登場する様です。

上の二枚の写真、一枚目がネロンガで二枚目がガボラですが、二匹が選ばれたのは偶然か意図的か、元々が同じ怪獣の着ぐるみを改造して生み出された怪獣なのです。
東宝映画「フランケンシュタイン対地底怪獣」に登場した「バラゴン」は、極めて地底怪獣らしい地底怪獣で、この着ぐるみはまず、「ウルトラQ」第18話「虹の卵」のウランを好物とする地底怪獣「パゴス」に改造され、その後「ウルトラマン」で、「ネロンガ」、「ガボラ」、「マグラー」へと次々と改造、変遷して行きます。
因みにパゴスとガボラは、ウランを求めて出現すると言う似かよった設定ですが、当初はガボラではなくパゴスを「ウルトラマン」に再登場させる予定だったらしいです。

最後に、この長身で細身のウルトラマンを演じていたスーツアクターの古谷敏氏について記しておきます。
古谷氏と言えば、「ウルトラセブン」のウルトラ警備隊の一人であるアマギ隊員としても有名ですが、「ウルトラQ」の頃からスーツアクターとして活躍しておられました。体型を見れば納得ですが、「ケムール人」と海底原人「ラゴン」は彼が中身だった様です。
私達の世代は、最初に出会ってしまったウルトラマンがこのモデルみたいな体型ですから、そのイメージはなかなか払拭しがたく、漏れ聞こえてくる映画「シン・ウルトラマン」のすらりとしたウルトラマンの体型を知って、新しくも正直どこか懐かしく、じんわりと嬉しかったです。

「シン・ウルトラマン」、楽しみに待ちたいと思います。

悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (62)

第二夜〇仮面 その六

「おじいさんの骨董屋」に辿り着いたのは、観光案内地図を離れてから10分以上たった後だった。

行ったり来たりして二度もその前を通り過ぎていた。店の間口(まぐち)が狭く、両側の建物の隙間に埋もれる様に建っていたからだ。おまけに、掲げていた木製の看板も考えていたものより小さく古びていて、文字が目に留まらない。看板自体がまったくの骨董品だった。目的の店の前に立った時、私は呻(うめ)き声みたいなため息をついていた。
通り過ぎてしまったもう一つの原因は外観にもあった。その骨董屋が、骨董屋には見えなかったのだ(もっとも、一般的な骨董屋がどういうものか知っているわけではないが)。どこか‥・一時代前の喫茶店の造りを思わせた。もともとが本当にそう言うお店だったのかも知れない。私は、赤 青 みどり 黄色のカラフルなステンドグラスが嵌(は)まった木枠のドアをゆっくりと押し開けた。

迎える声は無かった。声の代わりに私をさり気なく迎え入れてくれたのは、店内に流れていた落ち着いたピアノの旋律‥‥‥‥。私はその曲を知っていた。お気に入りでもあった。サティの『ジムノペディ第一番』だ。
傘付きのランプを模した照明が縦長の店内の二ヶ所に吊るされ、陳列された品々を絶妙な明暗のグラデーションで浮かび上がらせている。手狭な場所を想像していたが、意外な程に奥行きがあった。
単なる文字のイメージに過ぎないが、「骨董屋」と言うより寧(むし)ろ「アンティークショップ」と呼んだ方がしっくりくる印象だった。ほど良い調和を保って並べられている西洋の調度類、工芸品などを目でゆっくりとなぞりながら店の一番奥まった所の薄暗がりに顔を向けると、照明の光を反射して、丸い眼鏡のレンズが二つ、その中に浮かんているのに気がついた。

「あ‥あっ、こんにちわ」私は慌てて挨拶する。
丸眼鏡の光がスーッと上に移動した。どうやら腰かけていた人物が立ち上がったらしい。
「随分と若いお客さんだね。こんにちは」そう言いながら奥の薄暗がりから現れたのは、おそらくこの人が「骨董屋のおじいさん」、スラリと背筋が伸びた面長の顔の老人だった。首元までボタンの留められたシャツにベストを合わせ、白髪はきちんと後ろにまとめられ、丸眼鏡のレンズの向こうには品の良さそうな細い目が優しく輝いている。やはりここは「アンティークショップ」であって、おじいさんは「アンティークショップのおじいさん」である‥と思った。

「あなたは先ほどから、店の前を何度か行き来していた様だが‥‥、ここを探していたのかね?」おじいさんが落ち着いた声で質問してきた。
「そっ、その通りです」全部見られていたんだと、顔が少し赤らむのを感じながら私は答える。「ちょっと訳の分からない‥・いえ、かなり訳の分からない事があって、ご相談したくて来ました」
「ほう‥‥‥‥」
おじいさんは店の奥に手招きし、商品かも知れないシャレた感じの木製の椅子を私に勧めた。自分は、年代物に見えるレジスターの乗っかった机とセットで置かれていた椅子に腰かけた。先ほどもたぶんここに座っていたのだ。
「何があったか多少は予測がつくが、取り敢えず伺いましょう」
「ありがとうございます」私はペコリと頭を下げ、椅子に座る時に肩から外して膝の上に置いていたリュックから、「みんなの顔」を慎重に取り出した。
おじいさんはそれを目にするなり、「やはり‥‥‥」と呟いた。

次回へ続く