「テレビまんが」なんて呼ばれてた。後編

「ヒルダはバラバラ‥‥‥‥‥」
小学生の時に観た、懐かしいアニメ映画の劇中に登場する、印象的な台詞です。

そんな感じで今回は、バラバラの新旧綯(な)い交ぜで、強く印象に残っているアニメ(テレビで放送されたもの)を思いつくままに列挙していきたいと思います。

海のトリトン は海洋冒険ファンタジーの傑作でした。
トリトン族の生き残りで、人間に育てられていた少年トリトンが、オリハルコンの短剣を手に、かつてトリトン族を滅ぼし七つの海を支配するポセイドン族と戦います。「オ・リ・ハ・ル・コーォン!」の掛け声と共に光を放つ短剣を振りかざすトリトン。その強烈な閃光の中、ポセイドンの戦士達は皆、泡がはじける様にことごとく消え去っていきます。そしてついにポセイドンの本拠地の神殿に辿り着くトリトンでしたが、オリハルコンの短剣の力は、命令を下し一族を操っていたポセイドン像と近づいた事で、考えもしなかった悲劇を生んでしまうのです。
主題歌も良かったです。

主題歌が良かったのは 宝島 もそうでした。有名な冒険小説が原作なので内容は言わずもがなですが、演出と絵のタッチがすばらしく、主題歌の流れるオープニングは特に忘れられません。「さあ行こう 夢に見た島へと‥‥・」
随分年を経てからの経験ですが、散歩でもしていたのかたまたま通りかかった見ず知らずの小学校の校舎から、合唱曲として歌うわれるこの主題歌が流れてきて、思わず足を止め感慨にふけってしまったのを思い出します。

「たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。鉄の悪魔を叩いて砕く。キャシャーンがやらねば誰がやる!」のナレーションで始まる 新造人間キャシャーン は超クールでした。面白かったです。
同じタツノコプロ制作ですが、宇宙の騎士テッカマン もかなり印象に残っています。襲来する敵が謎めいていて、迎え撃つテッカマンの宇宙空間での立ち回りが見ごたえがありました。人体にかなりの負荷がかかるテックセットシステム。主人公 南城二がロボットぺガスの中へ入り、テックセットしてテッカマンに変身するシーンも辛そうで、戦い終わって元に戻ってからがまた、さらに辛そうでした。お話は多分、未完で終了したはずです。敵の大群が待つ宇宙域に、たった一人ぺガスに乗って立ち向かっていくテッカマンの雄姿がラストシーンだったと記憶しています。また、スペースナイツの一員となる異星人、アンドロー梅田が渋くてカッコ良く、かなりの存在感がありました。声優は確か山田康雄さんでした。ルパンとは違って、おちゃらけの欠片もないキャラクターでした。

割と新しめで、BLOOD+ が良かったです。沖縄から始まり、東南アジアやロシア、ヨーロッパなどと、ロードムービーの様に舞台が変わっていくのも興味深かったし、主人公 小夜の武器、自らの血を染ませる細い溝が切ってある刀も独特でした。常にチェロケースを携えてつき従うハジの存在も良かったです。

こちらも私の感覚では新しめ、交響詩篇エウレカセブン です。主人公の少年レントンと少女エウレカの出会いの物語です。エウレカセブンのセブンは、朝七時からオンエアーしていたからのセブンでしょうか?
とにかく、設定されたその世界観が独特でした。とある生命体自らの存在が、他を退けてしまった事から生じた孤独。人間とコミュニケーションを取るために生み出された少女。「地球であったのか」と言う驚き。
最終回のシーン、電気グルーヴの「虹」がとても効果的に使われていて、良かったです。

列挙する‥と前置きしたのにあまり書けませんでした。すみません、時間切れです。
いつか改めて機会を作って、残りを書いてみたいと思います。その際はまたおつき合い下さい。


「テレビまんが」なんて呼ばれてた。中編

女の子の主人公が活躍するアニメが登場して、続いていくつかの作品が放送される様になりました。
「魔法使いサリー」「ひみつのアッコちゃん」などです。いにしえの王国の物語である「リボンの騎士」はすでに放送されていましたが、今度は魔法を使う女の子(つまり魔女。魔女っ子なんて呼ばれていく)の、まわりを巻き込んでのドタバタコメディです。その頃同じくテレビ放送されていた海外ドラマ「奥さまは魔女」の影響だったのでしょうか?
「奥さまは魔女」のオープニングはアニメの絵で、お決まりのナレーションが入ります。『奥様の名前はサマンサ。旦那様の名前はダーリン。ごく普通の二人はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。ただ一つ違っていたのは、奥様は魔女だったのです』だったかな?サマンサは魔法を使う時、閉じた唇を左右に動かします。子供心にもそれがとてもチャーミングでした。長く続いたドラマで、サマンサとダーリンにはかわいい女の子が産まれますが、その愛娘タバサもやはり魔女。魔法が使えて、良い意味で話はどんどんややこしくなります。
魔法を使う事でエピソードに事欠かないこのホームコメディは、おそらく後のたくさんの作品のお手本になったんだと思います。

話は少々脱線しましたが、東京オリンピック(1964年)の後、まんがやドラマに「スポ根」と言うジャンルが生まれました。「スポーツ根性もの」のことです。
「アタックNo,1」「アニマル1(ワン)」は、東京オリンピックでメダルを獲得した人気競技種目の女子バレーボールとアマチュアレスリングの世界を描いていました。「アニマル1(ワン)」の主題歌には『やるぞ今に見てろ、バババババンと日の丸揚げるのだ。がんばれアニマルワン。強いぞレスリング』と言う歌詞があります。目標に向かって自分を日々鍛錬していく。子供たちにも分かりやすいクリアなテーマです。乗り越えなければならない壁がいくつも立ちはだかり、競争するたくさんの相手が登場します。「ライバル」と言う言葉もこの頃憶えました。
スポ根の代表だった「巨人の星」は、当時川上哲治監督の下、リーグ9連覇に向かってひた走る読売ジャイアンツの人気と相まって、長く放送されました。アニメには、原作にない展開やお話がふんだんに盛り込まれていて、最終話の終わり方も、一歩踏み込んだ解釈のものになっていました。動く絵のダイナミズムを痛感させてくれたのもこの作品で、今でも鮮明に覚えているのは、星飛雄馬の投じた大リーグボール1号を、ライバル花形満が渾身の力を振り絞ってスタンドに運ぶ、とてつもない表現のシーンです。
アニメそれぞれの演出の違いやその大切さに気づかされたのは、この頃からだったかも知れません。

当時はもちろん録画機器などありません。観たければ、放送される時間にはテレビの前にいなければなりません。だからそんな能動的になっている分、感じ方だったり楽しみ方だったりもひとしおでした。好みもはっきりと出てしまっていたはずです。だから、これも観てそれも観てあれも観るなんて事はあまりなかった様に思います。
それでも結果的にたくさんの作品を観てきた実感があるのは、再放送のせいでしょう。学校から帰ってひと心地ついた頃に、テレビでは何かしらの再放送がやっていて、退屈しながらでも習慣的に観てしまいました。でもそのお蔭で、見逃していたものが観れたり、今まで触手の動かなかったものの再評価に繋がっていく事も時々あって、例えばサリーちゃんなどは、そのおもしろさを再放送が教えてくれました。

さらに次回へ続く