巨人真伝トキ回顧録 前編

月一連載「リアリティー’88」の終了後、1989年に「巨人真伝トキ」は変則な形式で連載が始まりました。
「週刊ヤングジャンプ」の性質上、より多くの読者にアピールする新しい展開を期待されての始まりだったと思います。強烈な存在感のあるキャラクター。アクション(戦い)あり、謎解きありの娯楽性に富んだ作品を目指すこととなりました。
私にとって初めてのキャラクター漫画の連載は、「リアリティー’88」シリーズのような読み切り作品にはない新境地へのチャレンジで、担当編集者さんも同じ意図だったのだと思います。
実際「リアリティー’88」連載時は、月に一本新しいアイディアを捻出し決まったページ数の中に収めるという、消耗の激しい作業の連続で自分自身も結構疲弊していた状態でした。

キャラクター漫画で長編のストーリーとなれば、設定と大まかなプロットを決めておけば、ページ数展開ともに自由度の高い創作環境が与えられたのだと受けとめ執筆を開始、「解人之章」を二週連続の前・後編、約二か月後に「嘔之章」が掲載され「巨人真伝トキ」は走り出しました。

次回は回顧録中編、当初の設定と初期のプロットについて振り返ってみます。

リアリティー回想記 「仮面」

単行本リアリティーの表紙として使われたのが「仮面」のトビラです。表紙の案を試行錯誤している段階で、担当編集者さんの機転により使用が決まりました。
好き嫌いのある表紙だとは思いましたが、目を引く事は間違いないという判断で自分も快諾しました。

内容は密室物の群集劇です。夜の都会の真ん中、終電間近の地下鉄の同じ車両にたまたま乗り合わせた様々な人物達が、謎の男とかかわる事で話がとんでもない方向に展開していく一幕物の舞台といった様相でしょうか。「REALITY」と同様、新人作家として新しい表現を模索した実験的な作品となりました。
1987年ヤングジャンプ増刊3/10号に掲載され、印象的だったようで少なからず反響もいただきました。
シリーズ連載「リアリティー’88」への道しるべ的な作品だったのかもしれません。

当時、営団地下鉄東西線(現在は東京メトロ?)の始発駅「中野」に写ルンです(当時スタンダードだった使い捨てアナログカメラ)を持参し、駅や車両を撮影したのを思い出します。

最後に一言、邦画のファンとして、作中に登場する謎の男が戯言のように口にする名は実在した映画監督の方からお名前(一文字変えてあります)をいただきました。興味のある方は調べてみてください。

次回からは電子書籍化されたもう一冊、「巨人真伝トキ」プラス「木霊」について書いていこうと思います。ご期待ください。