お問い合わせファイル 「秋」綴じ

お待たせしました。今回はお問い合わせに関していささか不十分ではございますが、お答えしたいと思います。

以前「クライヴ・バーカー原作のお仕事」で、クライブ・バーカー原作の短編を二編と、「魔道士」という中編(映画「ヘル・レイザー」公開に合わせて刊行された原作本)を漫画化した事を記しましたが、これに関して欧米の方のコメント、もしくはお問い合わせが幾つかございました。
当然ではありますが英語だった事と、手前の理解力不足から満足な返答の機会を持てず、そのままになっております。この場を借りてお詫び申し上げます。
「クライヴ・バーカー原作のお仕事」でもふれましたが、過去のものとは言え、原作がある作品を全く自由に扱って良いとは考えておらず、ほんの数カットをお見せするだけにとどめております。ご了承ください。

次にMさんからで、未来予知をしようとして出来ず、今を予知したら頭が爆発するという件(くだり)のあるお話が「リアリティー」に存在したかどうかのご質問でした。残念ながら単行本にも未収録作品にもこれと類似する作品は見当たらず、それ以外でも私自身描いた覚えがありませんでした。

もう一つはOさんからで、「帰ってきた僕らのウルトラ冒険少年画報」で何回か扱った「ウルトラマン」ですが、懸案だった映画「シン・ウルトラマン」は観に行かれましたか?感想はどうでしたか?とのご質問です。
実は結局、観に行けませんでした。多少無理をしてでも行くべきだったと後悔していますが、楽しみにしていた分、中途半端に観たくなかったのも確かです。ここはもう大人しく、ビデオディスクの発売を待ちたいと思います。感想は、その時たっぷりと語る事とします。

我為すことことごとくこれ蛇足也

今回は予定を変更して、今の時期しか体験できないであろう些細(ささい)な事を、勿体(もったい)ぶって書いてみたいと思います。
題して『夏の終わりのハーモニー』です。

暦の上ではとうに秋で、日の入りも随分と早くなってきました。
夜の帳(とばり)が下りる頃、西の空を見上げると(見上げるほど高い位置でもありませんが‥)夏の星座の代表である『さそり座』が輝いており、ゆっくりと西の地平に沈み行(ゆ)こうとしています。
この星座の中央で赤い光を放つ赤色超巨星『アンタレス』は直径が太陽の680倍あるとされていて、さそり座のシンボル的な存在です。

そうしてしばらく‥‥・時を待ち、‥‥日が変わり、さらに時を経て空が僅かに白み始めて闇が退いて行く少し前、東の空に輝くのは冬の星座の代表『オリオン座』です。
鼓(つづみ)の形が特徴のこの星座は、『ベテルギウス』という1等星(やはり赤色超巨星)を持ち、この星は、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンと共に『冬の大三角』を形成します。

この二つの星座は、同じ夜空に輝く事は決してありません。
ギリシャ神話では、オリオンは優秀な猟師でしたが、この世界に自分が倒せない獲物はないと驕(おご)ったため、神の放ったさそりに刺し殺されました。
共に天に上げられ星座となった後、東の空から『さそり座』が姿を現す前、まるでそれから逃げ、隠れるみたいに『オリオン座』は西の空の下へと沈んでいきます。また、さそり座が西に沈むと、安心した様子で東からオリオン座が上ってくるのです。

夏と冬の代表的な二つの星座の物語に‥一晩かけて思いを馳(は)せる‥‥‥。今はそんな贅沢ができる季節の変わり目の、特別な夜空なのです。