悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (283)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百六十八

「 つまり‥ 娘を失ってからのぼく自身の心の有り様(ありよう)が‥‥ 結果的におまえを呼び寄せてしまった‥ということか? 」 ぼくは、呟く様な声でヤツに問い質した。

「 その通りだ。何も自(みずか)ら好き好(この)んで、ここにこうしているわけではない 」 葉子先生の顔が、何の感慨もなく答えた。

「 だったら、なぜ干渉(かんしょう)する? なぜ『パートナー』を名乗り、協力者面(づら)をしている?? 」

「 ふん 」 ヤツは人を小馬鹿(こばか)にした一言を発すると、こう続けた。
「 オレやオレと同じ存在達は、引き寄せられたとしても‥、決して自らの意志でそうしているわけではないのだ。次元の『変形や偏(かたよ)り』から生じるエネルギー差異の流れに乗じて流され、原因となっている地点に漂着したに過ぎない。さらには、その原因が消滅し『変形や偏り』が解消されない限り、流れ着いた地点に拘束(こうそく)され、身動きが取れない状態がいつまでも続くのだ 」

「 ‥‥それで‥ 今おまえがやっていることは、ぼくの『精神世界』の捻(ね)じれや歪(ゆが)みを是正(ぜせい)して、次元の『変形や偏り』となっている原因を消滅させようとしている‥ と言うことか? 」

「 ほう‥ 理解が速いじゃないか 」 葉子先生の顔が、まるで『お利口な教え子』を褒(ほ)めそやす時みたいに微笑んでいた。
「 漂う存在のオレ達にとって、漂着先の事情に介入し、原因となるものを取り除くことだけが、再(ふたた)び『漂う自由』を取り戻すことのできる唯一(ゆいいつ)の方法なんだ。分かったか? 」

「 ‥分かった‥‥ 」 ぼくはそう答えた。
しかし、次元の『変形や偏り』の原因となっているものを取り除くとか、消滅させるとは‥‥、ぼくにとってそれは一体‥どんな意味を持っているのか‥‥‥‥ 図りかねていた。
ヤツは、ぼくのパートナーだと言った。ぼくが描いたシナリオを、形にする手伝いをしてるとも言った。本当にそんな方法が、『ぼくの精神世界に根ざしているはずの原因』を排除(はいじょ)したり、もしくは消滅させることに繋(つな)がって行くのか?‥‥‥‥‥‥‥

嫌な予感が‥した。

次回へ続く

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