悪夢十夜~獏印百味魘夢丸~ (272)

第四夜〇遠足 ヒトデナシのいる風景 その百五十七

おそらく彼にとって全くの意味不明だったに違いない『ぼくの問いかけ』に、もうこれ以上つき合いきれないといった様子で、モリオは再び地べたに座り込んでしまった。
「 急にわけの分からないこと言い出すからついつい乗せられちまったぜ、まったく‥ 」 モリオはそうぼやきながら、ぼくの方を上目遣いに睨(にら)みつけた。
「 要するに‥ オレをからかいたかったんだよ・な‥ 」

「 違う、違う! ぼくには見えた、分かったんだ! ぼくにとってここは、特別な場所なんだってことも‥ 」 ぼくは正直に答えた。
「 だったら言ってみろよ。ここ(この空間)が一体全体どんな形をしてて、 そしてそれがおまえにとって『どんな特別』なんだよ? 」

「 そっ‥‥ それ‥は‥‥ 」 ぼくは口ごもってしまった。あまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)に聞こえて、信じてもらえないと思ったからだ。
「 なんだよ。やっぱりオレをからかってたんだな 」
「 違うよ! だから、違うんだって! モリオに話を振ったのは‥‥ ‥ 」 
再び口ごもったぼくを、モリオは強く睨みつけた。
ぼくは、噓をつく気持ちはない。相手が理解できなくても、本当のことを言ってしまいたかった。

「 君ひとりがここに‥‥ この空間に‥留まっていられることが‥‥ ぼくには不思議だったから‥なんだ 」
ぼくは、モリオの睨みつけてくる目を精一杯見返しながら、正直に言った。
「 なぜならここは、そもそもぼくが拵(こしら)えた、ぼく以外の人格が一切(いっさい)立ち入ることのできない特別な空間‥‥ のはずなんだ 」

次回へ続く

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