我為すことことごとくこれ蛇足也 其の四

「ちいさい秋みつけた」のは‥‥誰ですか? 前編

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
めかくし鬼さん 手のなる方へ
すましたお耳に かすかにしみた
呼んでる口笛 もずの声
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
お部屋は北向き くもりのガラス
うつろな目の色 とかしたミルク
わずかなすきから 秋の風
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた

誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
むかしのむかしの風見の鳥の
ぼやけたとさかに はぜの葉ひとつ
はぜの葉あかくて 入日色
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた


私は度々‥物語の中で、歌の歌詞を引用します。
引用しているのは大体が童謡や唱歌なのですが、そのそれぞれの歌の歌詞にインスピレーションを掻き立てられ、イメージが豊かに広がっていくことがよくあるからです。

今回、冒頭に記した歌は、言わずと知れた童謡『ちいさい秋見つけた』の三番までの歌詞ですが、この歌も私自身独特の感想を持っていて、いつか使わせていただこうと考えていたものの一つでした。
作詞はサトウハチロー、作曲は中田喜直。何気ない小さな秋の気配をひとつ‥ふたつと描写していく、どこか物悲しい初秋の歌なのです。

私は子供の頃、この歌をテレビ(おそらく『みんなのうた』)で見聞きしたり、小学校の音楽の時間に歌った覚えがありますが、そうやって耳にする度に感じていたのは、どことなく醸し出されてくる『陰鬱(いんうつ)さ』でした。当時子供だった私はもしかしたら、全てに解放的だった夏休みが終わりを告げ、とうとう始ってしまった二学期への落胆の気持ちをこの曲に当てこすって、そう感じていたのかも知れません。
ただ、大人になってから、大人の感性で改めてこの歌詞をなぞってみても、子供の頃に感じていた『陰鬱』な印象は消えず、むしろやはりそうだったと再認識してしまったのです。

中編へ続く

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